文章のリズムとはなんぞや? ~読みやすい文章を求めて~

原文

"Unsolved mysteries."
 Raymond West blew out a cloud of smoke and repeated the words with a kind of deliberate self-conscious pleasure.
"Unsolved mysteries."

上の文章がなにか、お分かりだろうか?

実はこれ、アガサクリスティーの短編の1つ、火曜クラブの冒頭である。


深町眞理子 訳

「未解決の謎か」
レイモンド・ウェストが煙草の煙をふぅっと吐きだしながら、もう一度おなじ言葉をくりかえした。いくぶん意識的な、なにやら自分ひとりで楽しんでいるかのような口調だ。
「未解決の謎か」


中村妙子 訳

「迷宮入り事件」
レイモンド・ウェストは、タバコの煙をパッと吐き出してくりかえした。ゆっくり味わいかえしているようなうれしそうな口調だった。
「迷宮入り事件」

 

DeepL翻訳

"未解決のミステリー"
 レイモンド・ウエストは 煙を吐き出し わざとらしい自意識の喜びで その言葉を繰り返しました。
"未解決の謎"

 

3種類の日本語訳を並べてみると、けっこう印象が違いますね。

どれも一長一短です。

 

深町版の方がライブ感があるのは、所作を写し取っている、もっと平たく言うならば、現在進行形で実況中継している風の文章になっているからか。

中村版の方は動作が終わるまでまって、何があったのかを描写している感じ。

 

個人的には深町版の文章が好みです。

何があったのかを振り返りながら記録するよりも、現在進行形で起きていることを記録していく方がワクワクするしね。

文章のリズムって、ライブ感を出すってことなのかもしれない。

 

1センテンスの中でキャラの動作が切り替わると、文章読んでるだけなのに、物語の中のキャラクターが動いてる感じがする。まさにライブ感。

それが躍動感となって文章にリズムを与えるのかな?

 

〇〇しながら▲▲した。

(動作が切り替わっている)

 

〇〇して▲▲した。

(1回ずつ、2回行動した)

 

動作の切り替わりを描写してあげると、読んでて心地よいのかもしれない。